人が住んでいない空き家に足を踏み入れる時、人が住んでいる家とは違う何か異色な気配を感じる。それは、古着に残る着用者の気配と似ている。
これまで作家は “古着を糸になるまで分解する、そしてその糸を結び直すことによって、新たな形へと生まれ変える” という手法を用いて、気配や記憶など実体が不確かで不可思議な存在を追い求めてきた。
今回の会場となる20年ほど使われていなかった空き家は、1階が倉庫、2階が若夫婦の住居として改築された建物。
この展示では、ふたつの時代を記憶する会場となる空き家もひとつの作品の素材としている。
現代を生きる私たちが中に入ることで、この空き家は三つの時が交錯する装置となり、急速に変化し続ける現代の私たちの暮らしについて考察する機会を与えてくれるだろう。その一方で、空き家から出てきたこの地域特有のもの、旧池田中学校や旧蒲生小学校の制服、破魔矢や脱穀機などを素材とすることで、この地域の人々の暮らしの記憶の作品化も同時に目指す。


海辺のクォーツ
アーティスト:平野薫
作品No.:sd13
料金:無料
休業日:会期中無休
開館時間:9:30-17:00